ベトナム南部ベンチェ省出身のトゥーさんと初めてお会いしたのは、約2年半前。まだ来日してからそれほど経っていない頃に、浜田市内の日本語教室で少しお話する機会がありました。教室を2つ掛け持ちして日本語を学んでいたトゥーさん、平日も仕事が終わってから夜遅くまで勉強していると聞き、感心したのを憶えています。そんな頑張り屋のトゥーさんも今年の夏に技能実習を終え、次は他県で新しい仕事を始めることになったそうです。島根での3年間を振り返り、話を聞いてきました。

トゥーさん

トゥーさん

SIC:島根での暮らしはどうでしたか?

トゥーさん:近所の人にたくさん助けてもらいました。近くのスーパーではいつもおまけのお菓子や果物をもらったり、長く日本に住むベトナム出身の方からは日本語のジョークを教わったり(笑)。たくさんのいい人に出会って、日本の習慣や文化もたくさん教わりました。
最初に日本人と会ったとき、話が全然分からなくて「恥ずかしい!」と思いました。だから、日本語をもっと勉強して、分かるようになりたいと思ったんです。日本語教室にも3年間通って、とても楽しかった。教室の活動で山口や広島に旅行に連れて行ってもらったりもしました。

日本語教室の皆さんと、しめ縄作り

日本語教室の皆さんと、しめ縄作り

SIC:来日したばかりの頃は、困ることも多かったですか?

トゥーさん:日本語が分からなくて困ることが多かったです。買い物のときには写真を見せて、店員さんに聞いたりしていました。酢と油のボトルがよく似ているから、間違えて買ったこともあります(泣)。
19歳の時に来日して、最初はホームシックになり、家族に会いたくて…よく泣いていました。3年は長いと思っていたけど、あっという間でした!

SIC:トゥーさんの故郷はどんなところですか?日本との違いは?

トゥーさん:私の出身はベトナム南部のベンチェ省で、いつも暑いです。ココナッツがたくさん植わっていて、ジュースやお菓子、殻を使った工芸品も有名です。ポットやお茶碗などの器、ひしゃくなど色々なものがココナッツの殻から作られるんですよ。
ベトナムと日本は、時間の早さが全然違います。同じ24時間なのに、日本では早い!日本人はいつも急いでいるように感じます。食事でも食べ終わったらすぐに出て行くでしょう?ベトナムではゆっくり食べて、会話を楽しんで、最後に必ず甘いものを食べます。ベトナム人のみんなでテト(ベトナムの旧正月)を祝うイベントをすると、1日かかります。(笑)
あとは、日本はゴミ出しのルールが厳しいです。またベトナムでは、バレンタインには男性が女性にチョコレートやバラの花をプレゼントしますが、日本は逆ですね。

ベトナムの伝統衣装、アオザイを着て

ベトナムの伝統衣装、アオザイを着て

SIC:今年もベトナム出身の皆さんで、テト(旧正月)のイベントを企画されましたね。

トゥーさん:はい。今年は2回目で、私は料理スタッフとして参加しましたが、ベトナムの雰囲気が懐かしかったです。浜田にはベトナム人が少ないと思っていたけど、たくさん集まってびっくりしました。
浜田はイベントが少ないので、天気がいい日にみんなでバーベキューをしたり、鍋を作って外で食べたりしていました。(SIC:外で鍋ですか!?)はい、ベトナムでは屋台があるからしませんけど。(笑)日本には屋台がないから、自分で作って持って行きました。いつも一生懸命食べていたから、写真は残っていません。(笑)

SIC:新型コロナウイルスの感染拡大も続いていますね。ベトナムのご家族は大丈夫ですか?

トゥーさん:はい。買い出しもまとめて行くし、自分で魚や鶏や野菜を育てているから大丈夫。2、3日に1回ぐらいFacebookで連絡を取りますが、兄も私がいい人たちに囲まれているから、と心配していません。

日本でよく食べた料理のひとつ、餃子。作ってもらいました♪ おでんもたこ焼きも、焼きそばも大好き!

日本でよく食べた料理のひとつ、餃子。作ってもらいました♪
おでんもたこ焼きも、焼きそばも大好き!

SIC:今後は、どんなお仕事をする予定ですか?

トゥーさん:次は、特定技能という在留資格で介護の仕事をします。今までは水産加工場だったので環境が全然違います。浜田でお年寄りの方とよく会っていたのですが、とても優しくて、お世話したいと思いました。介護の仕事で、お年寄りのお手伝いがしたいです。
だからこれからもっともっと日本語を勉強しないといけません。敬語もたくさん教えてもらいました。これから介護の研修が3カ月あるので、頑張ります。

SIC:将来は?

トゥーさん:介護福祉士の資格を取って日本に住み続けたいです。試験を受けるためには3年間の経験が必要です。でももし資格が取れなかったら、ベトナムに帰って親と暮らしたいです。またベトナムに帰る前に、浜田にも来たいです。(SIC:お待ちしています!)

日本語スピーチコンテストに出場した皆さんと一緒に

日本語スピーチコンテストに出場した皆さんと一緒に

■最後に
いつも明るく笑顔のトゥーさん、初めて会った時と比べて日本語も見違えるほど上達していました。仕事で日本語を使うことはあまりなかったようですが、休みの日には日本語教室に通ったり、江津で行われた日本語スピーチコンテストにも参加したりと積極的に日本語を学んでおられました。浜田から去ってしまわれるのはとても残念ですが、将来の目標に向かって進むトゥーさんを陰ながら応援しています!

(公財)しまね国際センターは~外国につながる人たち~を応援しています